『ベルベル人とベルベル語文法民族・文化・言語―知られざるベルベル人の全貌』

  • 2010.10.05 Tuesday
  • 06:21
■石原忠佳・新開正(著)、『ベルベル人とベルベル語文法民族・文化・言語―知られざるベルベル人の全貌』、新風社、2006年。 



第1章は、スペイン国立グラナダ大学に在籍していた著者が、現地滞在中に出会った著書とタンジェールの研究所において収集した資料に基づき、主にモロッコにおけるベルベル人の起源やベルベル語の種類、そしてその特徴を述べている。1965年以降のモロッコ政府によるベルベル語教育禁止を例に挙げ、それが結果的に、ベルベル語話者の急激な減少と同言語を軽視する風潮を生み出していると説く。しかしながら近年では、「ベルベル文学の復興や再生」をモットーにしたベルベル協会主催の夏季セミナーの開催など、彼ら自身による積極的な復興運動も見られる。今後は、イスラーム・スペイン史を考察する上で、これまでなおざりにされてきたベルベル人の功績について再考していくべきだと訴えている。



「ミドルアトラス・ベルベル語文法ノート」と題した第2章は、現地に滞在経験を持つ著者によって、ベルベル語の中でも北部のターリフィート方言と主にミドルアトラス山脈を中心として使用されているタマズィフト方言を基に執筆されている。本章は、「文字・音韻編」、「文法編」、「辞書編」の3編より成る。

 

本書は、ベルベル人や彼らの言語について書かれた数少ない邦文文献である。具体的な彼らの生活や文化、習慣についてはあまり触れられていないが、ベルベル語を体系的に学習してみたいという方にとって、特に「文法編」や「辞書編」は大変参考になる。また、アンダルシアに数々の遺産を築いたイスラーム・スペイン史におけるベルベル人の影響を考察するきっかけともなる一冊である。本書の詳細は、Home左下の≪「ベルベル人」とは?≫、を参考にしてください。





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『Fair Trade』

  • 2010.10.04 Monday
  • 07:30
■Jacquesline Decarlo "Fair Trade" Oneworld Pubns Ltd. 2007





国際連合によると、世界の人口の約半数が一日2ドル以下の生活を営んでいる現状があるという。筆者は、このような貧困に直面している社会的弱者がフェアトレードの拡大を希望していると説くと同時に、「グローバル・ノース」と呼ばれる経済大国において、消費者が直面している健康問題、環境問題、人権問題などを紐解く糸口としてもフェアトレードの重要性を訴えている。



本書は、フェアトレードがいかにして、現在の世界システムに変革をもたらし得るかを基本に考察を進めている。まず、フェアトレードの基本概念、その歴史を述べ、「北」、「南」双方で実践されている活動の事例を挙げる。その上で、フェアトレードの利点、問題点を検討。



また、本書ではフェアトレードと自由貿易体制を比較して論じる。「北」の貿易障壁が維持される中、世界銀行をはじめとする国際組織は「南」のそれを撤廃する指導を行う。この動きに従うと、大量生産された安価な商品が流れ込み、地消地産のメカニズムは打撃を受け、小規模経営組織は解体を余儀なくされる。フェアトレードは、この経済システムに変革を求めるため、生み出された概念であるが、その一方で、自由貿易体制の中でこそ、消費者が購入品を自由に選択する権利を有すると説く。筆者は、商品者のこの「自由な選択権」が世界貿易システムに修正をもたらすと信じる。



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『フェア・トレードとは何か』

  • 2010.10.03 Sunday
  • 06:57
■ランサム、デイヴィッド(著)、市橋秀夫(訳)、『フェア・トレードとは何か』、青土社、2004年。









まず、フェアトレードが必要とされるようになった理由を、すでに経済力のある者をより富ませ、貧困に苦しんでいる者をより窮地に陥れる「自由貿易」形態に焦点を当てて論を開始。



現在、「南」の多くの国が輸出する一次産品は、彼らが「北」から輸入する工業製品に比べ、低額であるため、前者を輸出する国は慢性的な赤字に陥る。そこで、そのような債務国は、IMFによる「構造調整」を導入するに至るが、この制度の導入は、福祉や教育、農民支援、社会基盤の整備など基本的ニーズを満たす妨げとなり、結果的には、小規模農家や低所得者の生活をさらに苦しめている。



著者は、上記のような実態を調査するため、メキシコの輸出向け工程作業を行う工場(マキラ)、ペルーのコーヒー農園、ガーナのカカオ農園、グアテマラとカリブ諸島のプランテーションを訪れ、その詳細を各章で述べている。私が特に衝撃を受けたのは、グアテマラのバナナ・プランテーション。1975年の「ロメ協定」(ヨーロッパ共同体EECとACP諸国との間の経済発展援助協定で、EECとACP商品に対する優遇措置が骨子)は、ヨーロッパ体制に形を変えた植民地主義の遺産と著者が述べているように、プランテーションでは、労働者への有害化学物質使用による毒害、水や電気、時計にまで及ぶ雇用者の管理、27ドル/週という賃金、銃や犬を使った威嚇が報告され、それが意味するものは奴隷制だと指摘している。



このような人権侵害をはらんだ「不公正な自由貿易」を正すために、近年脚光を浴びているフェアトレード。それは、?生産者が環境に配慮する手助けをし、彼らの暮らしが少しでも向上するようにきっかけを提供すること、?生産者と常に水平な関係性を築き、それを持続すること、?環境問題、経済格差問題、自分たちが使用する商品のルーツなどを地球規模で考え、それを地域で実践することである。



私たちが普段口にしているバナナやチョコレード。その生産過程で起こっている深刻な人権侵害にこれ以上目を背けてはいられないと同時に、「安い物が欲しい」と価格競争に拍車をかけるのではなく、その価格が適正であるか、今一度消費者自身が商品の背景に目を向ける必要がある。同書は、翻訳に若干問題があるが、フェアトレードの必要性を再認識できる一冊である。





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『モロッコ』

  • 2010.10.02 Saturday
  • 14:08
■山田義彦(著)、『モロッコ』、岩波新書、1951年。







本書は、著者が1939年の春夏に実際に行ったモロッコ旅行に基づいて執筆されている。その後、当時モロッコを保護領として支配下に置いていたフランス政府により、外国人のモロッコ奥地への立ち入りを禁じられたため、おそらく筆者は終戦前にモロッコを旅行した最後の日本人であろう。



著者は、カサブランカから南部の都市ティズニットまで訪れ、その都度見聞した異国情緒を歴史的事象と交え記している。当時、フランスの支配下にあったモロッコにおいて、現地の住民とフランス人がいかに同じ地で対照的な暮らしを営んでいたのか、フランス文化の流入或いは同国支配が確立されるに従い、現地の住民にいかなる変化が生じたのかという点が著者の描写から多分に想像できる。



非常に興味深い点は、現在のモロッコの若者心理とは対照的に、当時の青年が「モロッコは世界で一番よい國だから他國へ行く氣はない」と語っているところである。著者は、無知から生じた見解だと述べているが、当時はすでにフランス文化を目の当たりにする機会もあったため、その心情は、支配国に対する敵意、或いは彼らの現状生活に対する充足感から生まれているようにも見受けられる。



本書は、モロッコ土着の宗教、聖者崇拝の事例(出産時の儀式、子供の髪型、土地の精霊など)を多く取り上げているため、彼らの精神文化を理解する上で大変貴重な資料となる。現在多く出版されている旅行記とは異なり、独立前のモロッコの表情を垣間見られるという点でも、興味深い一冊である。 





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『国境を超える名誉と家族―フランス在住モロッコ移民をめぐる「多現場」民族誌』

  • 2010.10.02 Saturday
  • 13:56
■渋谷努(著)、『国境を超える名誉と家族―フランス在住モロッコ移民をめぐる「多現場」民族誌』東北大学出版会、2005年。







本書は、モロッコ北部のサメル村出身者を中心にした移民集団に焦点を当て、?グローバル化する現代世界の中の移民とはどういうものなのか??移民文化はどのような変容を遂げるものなのか?という点を考察。本研究は、1997〜8年にかけて、著者が同村出身者の多く居住するパリ市近郊およびサメル村近隣都市で行ったインタビューと参与観察に基づいている。



まず、移住の経緯が論じられる。それは、両大戦中に支配国フランスが行った「自発的」徴兵制度に基づく強制移住に端を発し、戦後はフランス国内の人材不足を補うために労働者として多くの青年が地中海を渡った。その後、1974年にフランスが新規移民受け入れを終了すると、すでに移住していた者が彼らの家族を呼び寄せはじめ、移民人口はさらに増加する。これらの移民集団は、移住先で「ダッカート」という相互援助が可能な一種のコミュニティを形成し、「名誉の文法」に基づく祖国の価値体系から逸脱しないよう、互いを監視する役目を担った。



この「名誉の文法」に基づく名誉競争が本書の中心課題である。著者によると、名誉競争は「禁止の領域」を基準に行われ、その基準は、 ‘土地’から‘消費競争’へと変化した一方で、 ‘女性を守る’という必要性は維持されているという。‘女性を守る’とは、伝統的に女性の行為が家の名誉を左右すると考えられているため、特に結婚前の女性が性的規範から逸脱しないよう管理することを意味する。娘がこの規範を破ると、瞬時にダッカートの噂となり、父親・兄弟は名誉を傷つけられる。「平等主義」を掲げるフランスで生まれ育った移民第2世代の間では、このような習慣を女性のプライベート軽視と批判する者もいるという。



この他、移民の帰省、婚資を例に移民文化の変容を検討し、結論では、「グローバル化」や「トランスナショナリズム」は移民の社会的・文化的「自由度」を過大評価していると述べた上、移民たちは、移住先の文化を吸収しつつ「名誉の文法」を「雑種化」させながら、境界上に独自の文化を創造するモロッコ系フランス人として生きていると述べるに至る。



本書は、宗教事項に関連した移民文化の記載が若干表面的ではあるが、多くのインタビューを掲載しているため、モロッコ人の声を聞き、彼らの考え方を探れるといった点は大変興味深い。また、モロッコ在住経験のある方なら、彼らの消費競争や噂の威力を記述した点など共感して読めるのではないだろうか。





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