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    『モロッコ』

    • 2010.10.02 Saturday
    • 14:08
    ■山田義彦(著)、『モロッコ』、岩波新書、1951年。







    本書は、著者が1939年の春夏に実際に行ったモロッコ旅行に基づいて執筆されている。その後、当時モロッコを保護領として支配下に置いていたフランス政府により、外国人のモロッコ奥地への立ち入りを禁じられたため、おそらく筆者は終戦前にモロッコを旅行した最後の日本人であろう。



    著者は、カサブランカから南部の都市ティズニットまで訪れ、その都度見聞した異国情緒を歴史的事象と交え記している。当時、フランスの支配下にあったモロッコにおいて、現地の住民とフランス人がいかに同じ地で対照的な暮らしを営んでいたのか、フランス文化の流入或いは同国支配が確立されるに従い、現地の住民にいかなる変化が生じたのかという点が著者の描写から多分に想像できる。



    非常に興味深い点は、現在のモロッコの若者心理とは対照的に、当時の青年が「モロッコは世界で一番よい國だから他國へ行く氣はない」と語っているところである。著者は、無知から生じた見解だと述べているが、当時はすでにフランス文化を目の当たりにする機会もあったため、その心情は、支配国に対する敵意、或いは彼らの現状生活に対する充足感から生まれているようにも見受けられる。



    本書は、モロッコ土着の宗教、聖者崇拝の事例(出産時の儀式、子供の髪型、土地の精霊など)を多く取り上げているため、彼らの精神文化を理解する上で大変貴重な資料となる。現在多く出版されている旅行記とは異なり、独立前のモロッコの表情を垣間見られるという点でも、興味深い一冊である。 





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