ニーチェと「私の生き方」

  • 2011.12.31 Saturday
  • 06:32
今年最後の日記は、最近読んだドイツの哲学者ニーチェについて。

とはいうものの、ニーチェの訳本を読んだわけではなく

西研教授が解説した『ツァラトゥストラ』を参考にしています。

ノルウェーの大学院で学び始めて

哲学に触れる機会が比較的多く

原文で読むにはハードルが高いため

軽いタッチで読める解説書を冬休み期間中に読んでいます。

中でも、いつか訳本を読んでみたいと思ったのが、こちらのニーチェ。



「早熟の秀才」と称されたニーチェは、1844年、ドイツに生まれる。

幼いころからピアノの腕は秀でており、

ワーグナーには音楽のみでなく思想的にも影響を受けたと言われている。

ギリシャ古典文献学に没頭し、その分野で功績を挙げたニーチェは

25歳の若さでバーゼル大学の員外教授に就任。

28歳の時に「理論と技術を万能とする進歩主義、平板に知的に人生を

理解する見方への批判」ととれる『悲劇の誕生』を公刊する。

この時代状況の批判に当たる書により、学界から相手にされなくなり

その後は、執筆活動を続けるものの、最終的には精神障害を患い55歳で死去。



『ツァラトゥストラ』は、彼が40歳のとき執筆したもの。

主人公ツァラトゥストラは、キリスト教に代わる

新たな価値基準を与えようとする預言者のような存在として描かれている。

これは、ニーチェ自身の声を代弁する形で書かれているようで

実際、「神は死んだ」というニーチェの言葉は、本書の中でも出てくる。

ここでいう「神」というのは、神そのものを指すというよりは

欧州で信じられてきた最高価値として理解される「キリスト教的なもの」

(民主主義、社会主義、科学技術進歩に対する信仰など)に対する批判と考えられる。

ニーチェは、キリスト教が生み出された背景に触れ

「神は弱者のルサンチマン―うらみ、ねたみ、そねみから生まれた」としている。

また、神や天国といったものは、人間が苦悩に耐え切れず、

それを逃れるために作りだしたとも考えている。

つまり、キリスト教は絶対的「善悪」の価値を提示したが

これは、すでに限界に来ており、人びとは創造的に生きなければならないと訴えたのだ。



「神は死んだ」という言葉を聞くと、過激な印象を受けるが

彼が説明したかったことは、キリスト教が育て上げた「誠実さ」のために

キリスト教それ自身をさえ否定する、真実のみを求める「自由思想家」を生み出した、

言いかえれば、真実を探求する科学主義の発展のため

神そのものの存在すら信じられなくなってしまったということ。

このような人びとが目標を喪失してしまった状態「ニヒリズム」の中では

キリスト教的善意を追求して天国へ行くという目標すら失い

「何のために生きるのか」という問いが生まれてくる。

まさに、高度経済成長を遂げた80年代以降の日本社会だと西教授は指摘している。

「愛も憧れも創造も知らず、健康に気を配り、労働も慰みの程度に必要とし、

平等で貧しくも富んでもおらず、わずらわしいことはすべて避ける。

安楽を唯一の価値とする人間たち。」の世の中。



ここまで読んで、日本社会はもとより、ノルウェーも同様に

ニヒリズムに陥っていると感じました。

クラスの多くは無神論者、「家族」という社会単位も大きく崩れ

簡単な仕事をこなし、快楽を求める生活。

19世紀末のニーチェの思想は、的中しているのかもしれません。



では、このようなニヒリズム社会で、人はどうやって生きていくのか?



ここで指摘されているのが「永遠回帰」の思想。

「人生のあらゆるものが永遠に戻ってくる」とされる「永遠回帰」の考え。

消したい過去も、また繰り返される「永遠回帰」の中でも

ほんの一つでも、心から生きていてよかったという「悦び」を感じたなら、

もう一度、苦悩も引き連れて同じ人生を繰り返したいと思えるという。

また、この「悦び」は、「私が求めているものは何だろうか」と

自分自身に問いかけることによって見出されると西教授は補足している。



近代以降、市場経済と都市の成立により、

人は「自分の人生」を選択できるようになった。

これは、「生き方の問い」を持つ人間が生まれたということを意味するという。

農家の息子は農家を継ぎ、娘は同じ村に嫁ぐという

言わば選択のしようがない人生の輪からはみ出してしまった。



「私の生き方」はどういったものか?



この問いは、選択幅が広がれば広がるほど

答えが見つかりにくくなるというもの。

これまで、比較的色々な文化に出会う機会を得て

魅力的な方にも多くお会いしてきました。

その出会いから、自分が歩む道のヒントをいただき

ここまでたどり着いていると思っています。

年齢的にも、いい歳になってきました。

今一度、「自分は何がしたいのか?」を自分に問い直し

ニーチェが示したように、創造的に生きてみたいと思います。

今年は、生活の変化もあり、これまで想像もしなかったような道が

また新たに見えてきたような気もします。

2012年は、自分にとって「いちばん大切にしたいもの」を見極め

それに近づけるように、また頑張っていきたいと思います。



今年の終わりに、個人的な日記で締めくくり、申し訳ないような気もしますが

自分の中の気持ちを明確にするためにも

こちらに書かせていただきました。



今年もサハラへの道をご支援いただき、ありがとうございました!

来年も、皆様との「一期一会」を大切に活動を続けていけたらと思います。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。 






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  • 2019.08.18 Sunday
  • 06:32
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    コメント
    オーロラ、きっときれいに見えているんじゃないかしらと思って、ついこちらにお邪魔いたしました。
    お元気ですか!オーロラが見えるからといっても、私には太陽の無い生活なんてきっと100%無理(笑)
    寒くて大変だと思いますが、その生活を経た後でモロッコの大地がどんな風に変わって見えて来るか、ぜひお話して下さいね!
    それではどうぞお元気で!
    • yama-san
    • 2012/01/27 7:17 AM
    部谷さん、ご無沙汰しています。お元気ですか?先日、アブさんのところで料理教室に参加された読者の方からメールありました。とても
    いい経験だったそうです。みなさんによろしくお伝えくださいね。
    • 口尾 麻美
    • 2012/02/27 12:44 PM
    yama-san

    コメントありがとうございます!!
    しばらくブログを管理してなかったようで
    お返事が大変遅くなり申し訳ございません!

    オーロラ、白い龍が夜空を走っているようで
    確かに幻想的です!!
    人生に、一度は見ても良いかもしてませんね!
    今年は、特に奇麗に見えたようで、ラッキーでした☆

    それでも、オーロラは、お写真の方が相当きれいみたいですよ!
    シャッターを開いている時間が長いのだとか…
    肉眼で見ると、なかなかお写真のようにはいかないようです。

    ここトロムソは、思ったより寒くもなく
    気温は下がってもマイナス10度ぐらいでしょうか。
    緯度の割に温かいというのは、本当でした!!

    モロッコは、お花のきれいな時期ですね。
    今年は、雨に恵まれたのでしょうか?
    今は、個人的に、一年で一番好きな時期です!!
    • marojap
    • 2012/03/18 5:24 AM
    口尾 麻美さん

    ご無沙汰しています!!
    お変わりございませんか?

    ベルベル村のお料理教室、現地の皆さんも
    楽しみながら続けさせていただいてます。
    毎回、コメディーのようなお姉さんとママのおかげで
    笑いの絶えない時間を過ごさせていただいてます。

    モロッコのお料理といえば、やはい家庭料理。
    その味を楽しんでいただき、嬉しい限りです!
    • marojap
    • 2012/03/18 5:29 AM

    久しぶりwww
    元気してんのか?
    俺は相変わらず、美味しい思いさせてもらいまくってるぜwww
    http://attam15.www.i-comm.mobi/
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